前編『わが子はギフテッド?』動画リンダ・シルバーマン博士(The Gifted Development Center)のインタビュー

本日は、ギフテッド研究の巨匠と言っても過言ではない、Linda Kreger Silverman博士のインタビュー動画の和訳を複数回に分けて、お届けします。※和訳については、ご本人から直接許可をいただいています。また、基本的に会話をそのまま訳していますが、一部、話の繋がりが分かりにくい部分などは言葉を補ったり、省いたりしています。 


今回は前編として

  最初~10:44までの部分を掲載します。

 

・ギフテッドネスとはどのようなもの?

 

・「ギフテッド児には特別な配慮は必要なく人生を上手くやっていける。」という思い込みが危険なのか

 

実際のインタビュー動画はこちら↓
『Is my child gifted? interview with  Dr Linda Silverman』

 



MC 

まずあまり詳しくない方のために、ギフテッドネスとはどのようなもので、何を引き起こすのか、どのような特性が当てはまるのかを説明していただけますか?

 

ええ、もちろん。ギフテッドネスという概念についてはたくさんの謎があります。多くの人がギフテッドでありながらそのことに全く気付いていません。多くの人がとても困惑しています。そしてこう考えます。

「うちの子はギフテッドではないわ。成績がオールAではないもの。」とか

「うちの子は読むことに問題を抱えているのだから、ギフテッドなんてことはありえないわ。」と。

 

ギフテッドネスには、様々な異なる定義がありますが、私の考えるギフテッドネスは「高度な発達」です。

あなたの息子さんのように2歳半で本を読み始めることは「高度な発達」のひとつの指標となるでしょう。しかし、早くから読み始めないギフテッド児もたくさんいます。なかには9歳まで本を読まない子どももいますが、だからといってその子がギフテッドではない、ということではありません。

 

ギフテッド児は幼い建築家であることもよくあります。パズルやレゴ、クリエイティブなものの発想や創り出すものに関して彼らはギフテッドであると言えます。彼らはレゴで信じられない程高度な建造物を作ります。説明書に従ってではなく自分ひとりで創作するのです。

 

MC 

それうちの息子だわ。

 

自分の年齢よりもずっと年上の子ども用に作られた道具を使ったりもします。ですから私はギフテッドネスを、「高い抽象的推理力」、「言語能力」、「空間認知力」と捉えています。そしてそれら全てが相互に組み合わさっていると私には思えます。別々に区別された才能や知能ではなく、それら全てに相関性があると私は考え、それらを相関的に考慮してギフテッドネスを観察します。それらは幼い子どもたちに最も顕著に表れます。   

 

02:49

ですから私は、両親は間違いなく、わずか生後11か月のわが子にギフテッドネスを確認することができると考えています。それを裏付ける調査もあります。調査結果をまとめた「Giftedness101」(2012.12出版・Linda Kreger Silverman著)は素晴らしいものです。

もうひとつの質問について、ギフテッドかどうかがわからないという人たちに、この本の冒頭を読むことでお答えしようと思います。

 

MC 

お願いします。

 

私はギフテッド?
周りからそう見えなければ「卓越した何か並外れたことをする人だけがギフテッドだ」という人もいるでしょう。しかし実際そうではありません。

 

『秘密を教えてあげよう。とても簡単なことだ。ものごとは心で見なくてはよく見えない。本当に大切なことは目に見えないんだ。』 

これは、「星の王子さま」(の中でキツネが王子さまに言う言葉)です。

 

ですから最初の章は「目に見えないギフト」です。人々が決してギフテッドネスとしてイメージしないような様々なギフテッドネスの表れ方について説明しています。

 

04:06

もうひとつこの本に書かれていることをご紹介しましょう。

見た目以上の才能を持つ人たちが存在します。よく見極める目を持てばギフテッドネスは予期せぬ場所で意外な形で表れます。

 

例えば見事な壁の落書き、宿題をやらない巧みな理由、センスのあるジョーク、鋭い質問、映画「Kissingジェシカ」の中の「マリネする?」(物事にすぐ決断を下さないで、少し自分の中で漬け込んで吟味する)というセリフのようなウィットに富んだ発言、ひとつの事への没頭、カボチャの外側ではなく内側を描いた画、決して変わることのない情熱、弱者を守る勇気、混乱のさなかに動じない強さなどです。

 

その子どもにギフテッドネスの指標となる何か特別なものがあることに気付き、その素晴らしさを伝えたとしたら、内に眠る小さなドラゴンが目を覚ましその小さな魂に火を吹き込めるかもしれません。

 

05:05

MC 

素晴らしいわ。とても素敵なことですね。全くその通りです。この3年間あなたと一緒に息子を支援してきたけれど、もしも彼が何の助けも得られなかったとしたら、ただもがき苦しんでとても苦労していたことでしょう。

あなたが素晴らしい対応をしてくれて、私たちを励まし、彼が与えられたギフトを愛してくれて、彼は生き生きと才能を開花することができたのです。本当に素晴らしいことです。

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では次に2つ目の質問です。よくありがちな誤解で「ギフテッド児には特別な配慮は必要なく人生を上手くやっていける。」という考え方があるということですが、どうしてこの思い込みが危険なのか、お話しいただけますか?

 

ええ、私は著書の1章をまるまるそれに費やしています。なぜならこれこそが、私がこの本で焦点を当てて伝えたいことですから。

ギフテッドに対するこの迷信と誤解はとても危険なものです。ギフテッド児の親に対して「あら、全ての子どもたちはみなギフテッドですよ。」と自覚なく言う人もいます。それは世の中の全ての子どもが知的に全く同じだと言っていることと同じです。これはギフテッドという言葉からその意味することを取り去る、いえ、取りあげるような発言です。

 

両親の心配を無視し、学校で何の配慮も援助も受けさせずにその子どもを放っておくことになります。それは不公平で適切な対応とは言えません。知的障害をもつ子どもの親の心配に否定的な学校関係者や教育者はいません。ギフテッド児はそのスペクトラムの反対側に位置するので同様に配慮が必要なのです。

 

ギフテッドの成人たち、ギフテッドの子どもたち、その親、支援者に対してとても大きな偏見が存在します。それらはギフテッド児の親に誤った知識を与え、その子どもに本当に必要な支援を受けさせずに放置することを正当化します。

 

ギフテッド児は特別支援の対象群に属する子どもです。私が今まで書いてきた全ての本で指摘してきたポイントはこうです。

知能検査(IQテスト)の得点が平均から2標準偏差低い子どもも高い子どもも、実際のところ他の子どもとは異なる学び方をするので、異なる指導方法が求められるということです。

 

07:36

平均より2標準偏差低い数値を示した子どもたちは認定を受け、精神分析医やトレーニングを受け資格を持った心理士からアセスメントを受ける権利を与えられ、個別にIQテストを受ける権利が与えられます。また、彼らは学校で個別の学習プランを組んでもらう権利を与えられます。さらに、法律によってその権利は守られています。

 

親の関与についていうと、親は学校と協力してその子どものニーズに応えるよう努めなければいけません。それは誰もが知っていることです。そして早期の介入が大きな成果を上げるということもわかっています。ですから私たちは子どもたちが非定型発達か定型発達かをできるだけ早い時期に見極めるように努めているのです。

 

私たちが理解できないのは、ギフテッド児が定型発達群として扱われていることです。他の特別支援対象児と同様に、彼らには特別な支援が必要です。ギフテッド児を理解せず「彼らは自分で上手くやれるわよ!」という扱いをすることこそが彼らをアンダーアチーブメントへ導いてしまうのです。

 

09:04

このように必要な支援を受けられなかった子どもたちは、学校という環境でいじめやからかいの対象となり、心身ともに傷つくことになります。ギフテッドの人たちというのは、遊び仲間ができ始める小さな頃から老人ホームに入るまでずっとはみ出し者です。

彼らは社会の主流から外れているために起こる全ての問題に対処しなければなりません。

世間一般の人々にギフテッドの性質を理解してもらえるように、彼らの学習能力ではなく、彼らの心理的特性を理解してもらうために私は「Giftedness101」を書きました。ギフテッドの人たちは通常とは異なる思考回路を持っているのです。

 

MC 

本当にその通りですね。

 

彼らには他の子どもとは異なる教育的介入だけでなく、異なる育児、異なる心理的対応が必要で、その特性を人々に理解してもらうことが必要です。そうすれば、彼らがものごとに強烈な反応をしたからと言って、すぐにプロザック(SSRI型の抗うつ剤)を処方されるようなことはなくなるでしょう。

 

ギフテッドの人たちに対するとんでもない誤った情報や誤解が存在し、痛ましいことが起こっています。私の本の中にも記録していますが、何と痛ましいことか。これらの迷信の被害者となった時、ギフテッド児やその親たちに何が起こるかについての調査が記録されています。

感情の強烈さはギフテッドネスの特徴のひとつですが、このことについてのデータもあります。

 

(前編はここまで、中編へ続く…)