(ギフテッドの子供達における)社会性の発達段階

 本日は、ギフテッド研究の巨匠と言っても過言ではないLinda Kreger Silverman博士が、ギフテッドの子供達における社会性の発達について書かれたコラムの和訳をご紹介いたします。

 

和訳については、ご本人から直接許可をいただいています。

元の記事はこちらになります。

https://www.sengifted.org/post/developmental-phases-of-social-dev2elopment

 

Linda Kreger Silverman博士は、南カリフォルニア大学で教育心理学と特別教育を専攻し、博士号を取得されたギフテッド研究で大変有名な心理学者です。彼女の詳しい経歴は、一つ前の記事(どのようにして親はギフテッドの子供をサポートできるのか)をお読みください。 

 

  

息子がハイリーギフテッドであることを知った、ある親は、「でも、子どもには親しみやすい人になってほしいのです!」と不安そうに話しました。彼女は、自分の息子がギフテッドの子供達のみのギフテッド教育プログラムに入ってしまうと、ギフテッドの子供以外の子供達とうまくやっていけないのではないかと心配したのです。これは、よくある心配です。

 

彼のIQスコアは測定可能範囲を超えており170以上と見積もられていましたが、彼の両親は息子がこれほどまでに聡明であることを受け入れる心の準備ができていませんでした。彼の母親は、彼が「普通の人生」を送ることを何よりも望んでいたのです。

この子の親にとって、他の多くの子供の親と同様に、「普通であること」とは、あらゆる階層の人々とうまくやっていく能力を持つことを意味します。これは多くの人、特にギフテッド児の親にとって重要です。ギフテッドの子供達はどのようにしてその方法を学ぶのでしょう? 

 

どうやら【ギフテッドの子供達における社会性の発達】には、3つの重要な要因が関係しているようです。

 

1、子供が尊敬され、子供の状態に細やかに対応する家庭環境

2、他のギフテッドの子供達と関わる機会 (特に自己概念が形成される幼年期)

3、青年期においてはいわゆる多数派の人々と関わる機会

 

子供達はまるでスポンジが水を吸収するように、周囲の環境から、言葉のパターン、態度、価値観、自己像を学び取ります。人生の始まりである幼児期は通常、愛情に満ち、信頼できるものであり、新しい発見があるたびにウキウキするものです。

 

そして、親に大事にされると、子供達は自分を大切にし、安心するようになります。家庭で、自身の考え方やニーズが尊重されている子供は、他の子供のニーズを尊重する傾向があります。子供は親の話し方や他人への態度を真似します。ですから、親があらゆる経歴や能力のある人を心から認めているときは、子供もまた同じようにします。

 

生まれ持った空気を読む能力のために、模倣することにおいて女子は男子より優れていると言えます。したがって、模倣がその子にとっての成長を促すような環境にいることが重要です。

 

優しさに満ちた家に住めば、親切になることを学びます。一方で、悪口を言い合う子供のいる家族の隣に住んでいれば、同じように悪口の言い合いをするようになります。また、精神年齢がすでに8歳の少女が幼稚園で5歳児のクラスに入れば、その子は5歳の行動をまねるようになります。

 

多くのギフテッドの子供達は、家族の中で自尊心の基盤が固められます。そして、その後、他の子供達との出会いがあります。5~6歳になるころには、オープンさと自信は、しばしば自己不信と防御という何層もの壁に取って代わられてしまいます。なぜなら、幼年期は、人と違うことが「問題」となってしまうからです。

 

幼い子供達は、たとえギフテッドの子供達であっても、違いを理解する能力がありません。子供にとって、他の子供がなぜ自分と同じような考え方をしないのかを理解することは難しいことです。

 

彼らは違いを「変であること」や受け入れられないことと同一視しており、これが自己概念の基礎となってしまうのです。そして、同級生たちに絶えず傷つけられてきた子供が、他人に寛大になることは難しいのです。健全な友人関係を構築するために必要な自信を築くには、自分と似たような子供達とのポジティブな経験が必要です。

 

後に、自己概念がしっかりと形成されると、子供達は違いを理解できるようになり、同じ年代の子供達からの否定的な反応を大局的に捉えられるようになったり、同級生の多様性を理解したりすることができるようになります。しかし、肯定的な社会的価値観を身に着けるには、何よりもまず受容されることが必要なのです。

 

子供は【自分を愛することができて、初めて他人を愛すること】を学びます。

このプロセスには通常、次のような段階があります。

 

1、自己認識

2、気の合う仲間との出会い

3、他人に理解され受け入れられていると感じること

4、自己受容

5、他者との違いの認識。 そして最終的に、、、

6、他人を理解し、許容し、認めることができるようになる。

 


 【ギフテッドの男子の社会的発達】

ギフテッドの男子にとって,自分自身の発達レベルと同じレベルにない子供達のことを理解すること簡単なことではありません。彼らは、平均的な子供達の遊びは「馬鹿げてる」とか「赤ん坊っぽい」と感じます。

 

8歳の精神年齢である5歳のギフテッドの男子は、他の子供達がルールを守らないと腹を立てます。彼には、他の子供達がルールの意味を理解できる精神発達段階に至っていないことを理解することができないのです。

 

彼が考え出すゲームは高度にオーガナイズされ、洗練されている傾向があります。そのことによって、他の子供達が彼のゲームに共感できなかったり、他の子供達が彼を笑ったり拒絶したりしたら、彼は、自分は何かがおかしいと結論付けてしまうのです。(Janos, Fung & Robinson, 1985)。

 

ギフテッドの男子は非常に敏感なので(Lovecky, 1991)、他人からからかわれたり批判したりされると深く傷つき、自分を守るために周囲に対して壁を作り始めます。この薄い壁は、実際には彼を保護してなどいません。その下には、かつてないほど傷つきやすい心がありますが、その壁を作ることによって、彼は、自分が簡単に傷つかないように、彼と他の子供達との間にある程度の距離を置くことができるのです。

 

これは、「女らしい」とみなされ、「男らしく」ないことを容赦なくからかわれがちな、繊細で芸術的な男子の場合に、より顕著に見られます。

 

子供は、常に敵対的な環境にさらされると、ますます社会的交流から遠ざかっていきます。子供は、自分が不器用で愛らしくなく、友達を作ることができないと思うようになるでしょう。そして、自分をからかう子どもだけでなく、ほかの子供にも不信感を抱くようになるでしょう。知らない人にも笑われて拒絶されていると思うようになってしまいます。

 

子供時代に、他者との関わりがうまくいかなかったことが多かった子供は、大人になって社会的接触を避け引きこもってしまうこともあります。それは、リスクが大きすぎます。

 

幸いにも、これに対する解決策とも言える方法があります。子供が自分に似たような他者と早い時期に接すると、自分が違っているとか「奇妙」だとは思わなくなります。そして、自分と同じように考えたり感じたりする他者や、自分と同じレベルでコミュニケーションをとることができ、同じような興味を持つ他者と容易に友達になることができるのです。真の仲間との繋がりは疎外を防ぐことができるのです。

 

Roedell(1985、1988、1989)は、ギフテッドの子供たちの社会性の成長について研究しています。彼女は、真の仲間の重要性を強調し、ハイリーギフテッドな子どもたちのためのプログラムの主な役割は、彼らが低年齢の間に真の仲間に出会う手助けをすることであると示唆しています。

 

「ピアという言葉は、共通の関心を持つ問題について、同じレベルで対話できる個人を指す」(Roedell,1989, p.25)。ギフテッドの子供には、活動ごとに異なる仲間(ピア)がいることが少なくありません(Roedell,1985,1989)。

 

ギフテッドである未就学児や幼稚園児は、初めての社会的交流を通して自分自身を定義しますが、彼らの発達と遊び仲間の発達の間のギャップが大きすぎると、適応が困難になるのです。

 

適応することは重要ではありますが、ギフテッドの子供には、同じ能力を持つ他者との交流の中でギブ・アンド・テイクを経験することも必要です。それによって、受容と理解することを学び、それが、社会的スキル発達とポジティブな自己概念を築くための鍵となるのです(Roedell, 1989, p. 26)。

 

子供は成長するにつれて、誰もが同じではないということを理解するようになります。自分とは違う子供達とどうやって友達になれるか、他人の視点で考えることができるようになるのです。

 

積極的な社会的交流から得られた安心感から、自分は友好的な人間であると認識し、他者が彼を好きになってくれると思えるのです。そのような子供達は、すべての人間には価値があるということを認識して、偉ぶったり、自分ほどギフテッドではないと思われる人を軽蔑したりすることなく、人道主義的な者になる可能性が高いです。

 

ギフテッドの子供達は、正義と倫理に関する高い意識を生まれ持っているのです(Roeper, 1991)。 彼らは、培われた自尊心の強固な基盤と、生まれつき持っている公平さと高い共感性によって、良き隣人、良き友人、リーダーにもなりうるのです。

 

他人を軽蔑することは、自尊心の低さの表れです。 もちろん、学習された行動でもあります。スノバリー(傲慢な態度、俗物根性)は知的な違いよりも社会経済的な問題なのです(Silverman, 1992)。家庭で人を軽視すると、子供は他人を尊重することを学べなくなります。

 

しかし、子供が家庭でも友人からも尊敬されているのであれば、他人を尊敬するのは当然の結果です。上手な社会的適応は、初期のポジティブな社会的経験があってこそ可能なのです。

 


【ギフテッドの女子の社会的発達】

模倣の問題は、ギフテッドの男子よりもギフテッドの女子の方がより顕著です。女子のその優れた空気を読む能力と、社会的に受容されることが重要であると幼い頃に学んでしまう傾向のために、集団に適合するために女子たちは男子たちよりもより顕著に自身の行動を変えます。

 

もし女子の社会集団が彼女よりも精神的にずっと幼ければ、彼女は友人達の真似をします。そして、すぐにその女子の集団の中で、考え方、態度、そして成績から見ても彼女が周りと違うことに気づかれなくなるでしょう。

 

女子のカメレオンのような資質は社会の中で助けにもなりますが、同時に彼女たちの能力開発における最大のハンディキャップであるとも言えます(Kerr, 1985)。女の子がアチーバー(成功者)になると何が得られるでしょう? 彼女たちによると、得られるものは非常に少ないのです。

 

研究者は一貫して、能力の高い少女は自分の知性を隠さざるを得ないと感じていることを発見しています(Bell, 1989; Buescher & Higham, 1989; Buescher, Olszewski & Higham, 1987; Coleman, 1961; Keislar, 1955; Kerr, 1985, 1991; Noble, 1987; Reis & Callahan, 1989; Sadker & Sadker, 1994)。聡明な女子高生は男子にあまり人気がないことが多く(Casserly, 1971)、男子は、女子よりもはるかに自分が知的であるという評判を高く評価します(Coleman, 1961)。

 

Fox(1977)は、非常に有能な女子中学生が、学業を早習する機会のために友達と離れようとはしないことを発見しました。女性がその知力を発揮するときには、友達関係を犠牲にしていることがよくあるのです(Bachtold & Werner, 1970; Sanford, 1956)。

 

さらに懸念されるのは、自己概念と成果に関する研究の結果です。LocksleyとDouvan(1980)は、学校の成績が良い男子よりも、女子の方が有意に抑うつ症状や心身症状が多く、自尊心が低いことを発見しました。Petersen (1988)によると、中学生の女子生徒の自己イメージスコアは成績が下がるにつれて上昇しますが、男子生徒ではその逆なのです。

 

3,000人の学生を対象とした最近の大規模な研究によると、女子たちが小児期から青年期に移行するにつれて、自信と学力が驚くほど低下することが報告されています(AAUW Educational Foundation, 1992)。これらの損失は男子と比べ物にならないくらい大きいのです。

 

本質的に、ギフテッドの若い女性はソフィーの選択 (*ソフィーの選択とは、ウィリアム・スタイロンの小説(1979))を迫られると言えます。すなわち、もし彼女たちが自分自身に忠実であることを選択し、達成と自己実現のための意欲を重視するならば、彼女たちは暗黙のルールを破り、男性と女性両方の仲間からの断絶(Gilligan, 1988)や愚弄と拒絶に直面してしまうのです。

 

しかし、もし彼女が夢をあきらめ、自分を抑えることを選び、エネルギーを女性的な呪縛に振り向け、男子、服装、外見、声のトーン、言葉の選択、ボディーランゲージを観察し、男性にとって魅力的になるために自分を作り直すと、彼女は受け入れられ、彼女のその努力に対して報酬を受けることができるのです(Silverman, 1995)。

 

社会的受容よりも達成を選ぶことには、すぐには価値がないので、女子がその選択をするためには、並大抵ではない自信を持たなければなりません。

 

このような理由から、ギフテッドの女子にとっては、幼い頃に精神的な仲間と付き合うことが特に重要となります。社会が個々の才能を伸ばすことを奨励しなければ、彼女らの能力の多くは永久に失われてしまうでしょう。

 

萎縮と発達の不全による才能の浪費の量は計り知れません。人生の目標や達成に対する態度は学齢前に形成されることが多いため、積極的な介入が早期に行われるほど、女子は社会的地位を失うことなく知的能力を評価し、発達させることができる可能性が高くなります。


Roedellは、認知、社会、感情の発達の間の本質的なつながりを私たちに思い起こさせてくれます。

 

親と教師は、ギフテッドの子供達の(周囲との)“違い”が持つ意味を理解することで、子供のポジティブな社会的、感情的成長を支える環境を作り出すことができます。最初のステップは、社会的発達と認知的発達の間にある複雑に絡み合ったつながりを理解することです。

 

クラスメートとのコミュニケーションが困難であることや、他の人が自分の語彙、スキル、興味を共有していないことに子供が気づいたとき、仲間との交流は限られ、満足のいくものではなくなってしまうかもしれません。

 

ギフテッドの知的刺激の必要性を無視して社会性の発展を期待することはできないのです。(Roedell,1988,pp.10-11)

 

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Linda Kreger Silverman, Ph.D., is a licensed psychologist. She founded and directs the Institute for the Study of Advanced Development and its subsidiary, the Gifted Development Center. She also founded Visual-Spatial Resource and Advanced Development Journal. She has studied the psychology and education of the gifted since 1961 and has written over 300 articles, chapters and books, includingCounseling the Gifted and Talented, Upside-Down Brilliance: The Visual-Spatial Learner and Advanced Development: A Collection of Works on Gifted Adults. Her Ph.D. is in educational psychology and special education from the University of Southern California.