2Eの子どもを育てるための5つのポイント

こんにちは。 

 

4月から新しい生活をはじめられた方は少し慣れてきたころでしょうか?

 

久しぶりの和訳記事の紹介になりますが、今回は、2Eについての記事をご紹介させていただきます。 

 

元記事はこちら:https://drdevon.com/how-to-support-your-2e-child-with-adhd/

 

By Devon MacEachron

 

 

 

2E ( twice-exceptionality)とは、高い知能やギフテッドネスと考えられる強みとともに、他分野での弱さやLD(学習障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)などの障害が、同じ子どもの中に共存していることを言います。

 

障害が邪魔をして得意分野の力を発揮できないことが多く、日常で、特に学校生活においてその子どもに関わる人はみな困惑し、フラストレーションを感じることになります。

 

2Eは、例えば全検査IQFSIQ -full scale IQ )が130以上の「総合的なギフテッド」であるとは限りません。実際のところ、ほとんどの2Eの子どもはIQテストでかなりのディスクレパンシー(各指標得点間の大きな差)を示すため、彼らの能力を測るために全検査IQFSIQ)を指標とするのは無理があると考えられています。

 

言語能力、非言語能力、流動性推理、視空間的思考のいずれかにおいて非常に高い能力を示せば、その子どもはギフテッドであると考えます。そして同時にLDADHDASDも併せ持っている場合、その子どもは2Eということになります。

 

この分野を専門とする心理学者として、また2人の2Eの子どもを持つ親として、親がどのように子どもをサポートし、アドボケート(支持、代弁、擁護)することができるか、ぜひ覚えておいてほしい5つのポイントを紹介したいと思います。

 

1. 正確な診断を受けましょう:

 

2Eの子どもたちは、過小診断と誤診の両方を受けやすい傾向があります。私はこのことについてブログの記事:Top Ten Reasons 2e and Gifted Learners are Misdiagnosed.2Eとギフテッドが誤診される理由トップ10)に書いています。

 

サラは、学校ではごく平均的な成績の、行儀の良い、夢見がちな女の子でした。ようやくある評価が出るきっかけとなったのは彼女の不安症状でした。サラはギフテッドであり、さらに不注意型のADHDとディスレクシア(読み書きの障害)があることがわかりました。

 

もしも彼女が感情面での二次的な症状を見せなければ、サラは最後まで“fly under the radar”(レーダーに引っかからずに飛ぶ=才能にも障害にも気づいてもらえない)まま学校生活を終えていたかもしれません。

 

マックスは、授業中は注意散漫でしょっちゅう席を離れ、権力にあらがい、絶えず大人たちと口論していました。彼は多動性-衝動性のADHDと、反抗挑発症/反抗挑戦性障害(ODD -Oppositional Defiant Disorder)と診断されました。

 

誰も彼の才能を「診断」しようとはせず、彼の知性や授業の退屈さが、彼の行動に大きく影響しているとは考えませんでした。

 

子どもの強みと課題(弱み)、全体像を理解する必要があります。

 

2. 支援(アドボケート)し、教育しましょう:

 

子どもに何が必要なのか正確な情報を持っていれば、ギフテッドのための様々な制度、IEPIndividualized Educational Program-個人教育プログラム)、504(アメリカのリハビリテーション法第 504 条、教育における合理的配慮)など、その子どもに必要な援助がより受けやすくなります。

 

おそらくあなた自身が学校や先生に2Eについてレクチャーする必要があるでしょう。彼らは2Eという言葉を聞いたことすらないかもしれませんし、ギフテッドであると同時に「障害がある」という概念を、すぐには理解できない先生もいるでしょう。しかし、ギフテッドのコーディネーターやスクールカウンセラー、校長先生といった有力な学校関係者の協力を得たり、他の保護者たちに働きかけて委員会を作ったりすることができるかもしれません。支援活動に力を貸してくれる専門家を雇う必要もあるかもしれません。

 

きしむ車輪になりましょう。(“the squeaky wheel gets the grease”キーキーと音を立ててきしむ車輪は油を差してもらえる-はっきりと自己主張をすれば、きちんと見返りを得ることができるという意味のことわざより)

 

*多くの保護者さんは、学校に子どもについて伝えることの難しさを感じていらっしゃると思います。その悩みを少しでも減らしたいという想いから、佐賀大学教育学部の日高茂暢先生に監修いただき【ギフテッド・2Eのお子さん向けのサポートブック】 を作成し、販売を開始しました。(応援隊会員は無料で使用できます。) ぜひサポートブックをご活用ください。*)

 

子どもにとって一番の支持者になりましょう。

 

3. 得意なこと、興味のあることに注目しましょう:

 

Best practices for 2e/gifted education2E/ギフテッド教育のためのベストプラクティス)では、子どもの得意分野と興味を伸ばすことに力を注ぐことが極めて重要だとされています。往々にして、子どもを「補正」してまわりの期待に沿うようにしようとするあまり、その子どもの強みがないがしろにされてしまうことがあります。

 

子どものギフテッドニーズ(能力に見合った学習ニーズ)に応えるために行動してください。ギフテッドプログラムへの参加、飛び級や教科単位の早修、難関クラスへの編入、放課後や夏休みの拡充教育活動(エンリッチメントプログラム)への参加などができるでしょう。子どもの興味に合わせて、このような取り組みを行ってください。

 

空想が好きなサラは、物語を話したり聞いたりするのが大好きでしたので、両親は良質な本を読み聞かせ、母と娘の読書クラブを作り、ストーリーテリング・カンファレンス(story-telling conference: 参加者がステージ上で物語を語るイベント)に連れて行き、創作した文章を書けるようにボイスディクテーションソフト(文字起こしソフト)を用意し、スピーチコンテストにも参加させました。彼女は英語(アメリカの国語)では上級クラスを受講しました。

 

マックスは物の仕組みを理解することが好きでしたので、両親はガレージの「ラボ」でいろいろな物を分解することを許し、科学博物館に連れて行ったり、ロボット工学教室に入れたりしました。彼は数学と科学で上級クラスを受講しました。

 

興味のある分野を充実させることで、その分野を超えて全体的に子どものやる気が高まるという副次的な効果も期待できます。何かを成し遂げることは、自己肯定感と自信を育みます。そしてその子どもが困難な状況に対処しなければならない時に、この自己肯定感と自信が大いに必要になるのです。

 

強みと自信を育みましょう。

 

4.苦手分野の対処もしましょう(ただし、重要なものに絞って):

子どもが苦手分野の課題に取り組むには援助が必要です。言語療法、行動支援、ソーシャルスキルトレーニング(SST)、薬物療法、実行機能コーチング、また、学校でムーブメントブレイク(じっと座っているストレスの緩和、集中力の保持のため、時々体を動かしリフレッシュする短い休憩時間を取らせてもらうこと)などの便宜を図ってもらうという方法もあります。

 

注意が散漫なサラは、ディスレクシアの訓練と、実行機能コーチングを受けました。彼女は宿題の管理、やるべきことを先延ばしにしてしまうことへの対処、時間の管理などの方法について学びました。マックスは薬物療法を受け、(規律や敬意について学べる)武術を始めました。

 

サラは学校で自分の考えに気を取られてしまうため、先生に注意をしてもらったり、制限時間の延長などの配慮をしてもらったりする必要がありました。一方マックスには、衝動性をコントロールできるようになるために、ソーシャルスキルトレーニングが必要でした。

 

2Eの子どもはみな独特で、それぞれ異なるニーズを持っています。2Eの子どもに対して、環境に適応するための支援計画を立てる際には、何が有効で何が有効でないか、その子どもの才能が与える影響について考慮する必要があります。標準的な行動修正プログラムでは裏目に出てしまい、協調的問題解決(CPS-Collaborative problem solving )の方がより効果的なこともあります。

 

テクノロジーに精通した2E/ADHDを併せ持つティーンエイジャーは、あなたがスクリーンタイムの設定をしようとしているペアレンタルコントロールをハッキングできてしまうでしょう。

 

自分がやりたいことを達成するために何が必要なのか、子どもに問いかけ、子どもの話をしっかりと聞いてあげることが大切です。その子の目標は何なのか?何を不満に思っているのか?何が障害だと感じているのか?何が助けになると考えているのか?

 

全てをやろうとはしないでください。優先順位をつけましょう。子どもがやりたいことを実現するために必要なスキルを身に着ける手助けに力を注いでください。

 

子どもが自分にとって重要なスキルを身につける手助けをしましょう。

 

5.子どもの個性を享受しましょう:

 

あなたの子どもは特別です。少なくとも2倍特別(twice-exceptional)なのです!子どもが2Eであるということは受け入れやすいものではないかもしれませんが、次の2つの重要なことを考えれば気持ちが楽になるでしょう。

 

第一に、あなたの子どもは特異な脳のおかげで大きな強みを持っている可能性が高いです。このことについて、私のブログの記事、The Top Ten ADHD SuperpowersADHD児の特別な能力トップ10)と、  Does your Dyslexic Child have a Visual-Spatial Super-Power? (ディスレクシアの子どもには、視空間において優れた能力がある?)に記してあります。

 

ADHDのある人は、そうでない人と比べてより創造的でエネルギッシュ、情熱的で、好奇心旺盛、生きる意欲にあふれ、マルチタスク能力に優れ、自発的である傾向があります。彼らは革新的でリスクを取ることをいとわず、起業家精神とその能力を持っています。

 

ディスレクシアのある人は、視空間的思考やナラティブシンキング(物語的思考)などを得意としています。ASDのある人には、興味のあることを、強い情熱を持って深く掘り下げる能力があります。

 

問題に対して独特な考え方をする彼らの拡散的思考や斬新な視点は、まさに今、私たちの世界が必要としているものと言えるかもしれません。それだけではありません。あなたの子どもはギフテッドで、その恩恵を受けています。子どものありのままを受け入れ、その子の良さを認めることで、親としての視点を変えることができるでしょう。

 

TiLT Parenting“TiLTペアレンティング” LDADHD、ギフテッドや2E、自閉症などのある子どもを育てる親を支援するコミュニティ)のDebbie Reberや、Bright & Quirky聡明な変わり者” 2Eの子どもやその親の苦労を和らげ、専門家の力を借りて自己実現を支援する団体)のDebbie Sternberg Kuntzは、このテーマについて素晴らしい活動をしています。

 

子どもの「障害」を「直そう」と思い悩むのではなく、子どもの能力を褒めてあげましょう。できないことよりも、できることに目を向けましょう。子どもと一緒にその才能を伸ばし、子どもが望む目標を達成する手助けをしましょう。

 

「人と違う」というのは、素晴らしいことです。

 

現在サラはジャーナリストで、文字通り物語を伝えることで収入を得ています。マックスはテクノロジー・アントレプレナー(技術系の起業家)です。彼らは自分の夢を生きています。彼らにはまだADHDやディスレクシアがあり、時にはそのせいで痛い目に合うこともあります。締め切りに間に合わなかったり、会議に遅れてしまったり、読むのが遅くて困ったりということです。

 

しかし彼らは自分自身の2ELDADHDの特性に適した職業を自ら選択しました。それは彼らの頭脳を駆使し、斬新な発想や創造力を発揮できる仕事で、そして何よりも重要なのは、2人ともその仕事が大好きだということです。

 

これ以上、何をわが子に求めることがあるでしょう?

 

 

 

注:このブログ記事は、ADDitude magazineADDitude2019年夏号)のために書いたHow to Support and Advocate for a 2e Child.2Eの子どもを支援・擁護する方法)を参考にしています。