本日は、ギフテッド研究の巨匠と言っても過言ではない、Linda Kreger Silverman博士のインタビュー動画の和訳、【最終回】をお届けします。※和訳については、ご本人から直接許可をいただいています。
最終回は後編として
21:22~インタビュー終了までの部分を掲載します。
・ギフテッド児特有の情緒的特徴や起こりうる困難について
実際のインタビュー動画はこちら↓
『Is my child gifted? interview with Dr Linda
Silverman』
21:22
MC ギフテッド児特有の情緒的特徴や起こりうる困難についてお話いただけますか?
両親はわが子(赤ちゃん)のリアクションの激しさに気付きます。その子がいかに知的に優れている(進んでいる)かということに気付くよりもずっと前にその激しさに気付くのです。小さい時からとても敏感で感情的なその情動性こそが、一生を通じてギフテッドの人の個性の一部といえます。私はこれまで、ギフテッドの激しさ、敏感さ、完璧主義について大変多く書いてきました。情動性の激しさはギフテッドの理解に必要不可欠な要素です。
また、非常に多くのギフテッドの人々に内向的性質もみられます。IQが高ければ高いほどより内向的で、その内向的性質は誤解されやすいのです。内向的な人は物事をより深く感じます。
ギフテッド研究においてこれらの性格因子についての理解は不可欠です。ですから私たちのセンターを訪ねてくる人たちはIQテストを受けるだけでなく、共感性、感受性、道徳的感性、激しさなどギフテッドの情緒的指標を調べる「characteristics of giftedness scale (ギフテッドの特性検査)」も受けていきます。
私たちはさらに両親に「過度激動(OE)チェックリスト」を渡し子どもについて記入してもらいます。それは感情的、肉体的(感覚的)、精神運動的、そして知的過度激動を調べるものです。子どもの内向性、外向性の度合いを診断するテストに母親と父親に別々に回答してもらいます。なぜなら母親と父親はたいてい子どもについて異なる認識を抱くものだからです。12歳の子どもには本人に記入してもらいます。
こうして私たちはその子の情緒、社会的繋がり、過度激動、感受性について多くの情報を集めます。これらは全てギフテッドの特性のうちの一つなのです。
24:00
MC
一般的にギフテッドの印象はというと「物事に強く心を動かされたりしない理知的な人」だと思われがちだと思うのですが、実際は全く正反対ですよね。
私たちの研究結果からこの点については確実にその通りだと言えます。1980年から多くの調査をしてきましたが、ギフテッドの過興奮性(過度激動)は、常に感情的なもののほうが、知的なものよりも強く出てきます。私たちは世界中の何千人という対象者の調査を行ってきましたが、情緒的過興奮性(OE)の調和平均値は知的過興奮性(OE)のそれよりも高いのです。
私たちはデンバーでメンサ会員の調査を行いました。彼らは身体を使わないトーキングヘッドと思われがちですが、彼らの場合も情緒的過興奮性(OE)が知的過興奮性(OE)を上回っています。
MC
あなたがたが行っているそれらの研究は本当に素晴らしいと思います。あなたのセンターがどれほどギフテッドコミュニティに貢献し、認知を高めることにつながっていることか。本当に感謝しています。
わが子がギフテッドではないかと考える人たちに、ギフテッドとして生きていく子どもに何をしてあげれば良いのか、すぐに実践できることを教えていただけますか?
25:15
わが子がギフテッドではないかと考えているご両親に、その知識を得るため必ず見てもらいたいウェブサイトが2つあります。
ひとつ目はGifted Development Center(www.gifteddevelopment.com)
もうひとつはHoagies’Gifted Org(www.hoagiesgifted.org)です。
※Google Chromeで閲覧すると日本語翻訳表示を選択することができます。
この2つのサイトには親のためのギフテッドに関する情報がたくさん載っています。記事は全て無料でダウンロードできます。全米でギフテッド対応の専門知識をもつHoagies’の心理学者の話も聴くことができます。
もしもホームスクーリングをお考えなら、これらのサイトには素晴らしいコーナーがあって、ホームスクーリング中の子どもが無料でそのカリキュラムを使うことができます。とてもよくできていて常にアップデートもされています。
もしあなたがギフテッドについて知りたいと思ったら、大人についても子どもについても、gifted development centerのウェブサイトに書かれています。ギフテッドの特性とはどういうものか、それを考慮せずなんの配慮もされないとどんなに危険で、その子どもに大変な混乱を招くかということを、このウェブサイトを読んで勉強し様々な情報を得ることができるのです。
自分が周りと違うという感情は、本当にたやすくアンダーアチーブメントや自分の能力を隠してしまうことにつながります。学校の勉強は興味をそそるものではないので彼らは求められる最小限のことしかやらなくなります。宿題のことで親と揉めるようになります。彼らに課せられた宿題はあまりにも無意味なものです。それはつまり、彼らが何を既に学んで習得したか、更に高度な認知過程に進んでいるかの証明といえます。
27:30
数学の公式を、ただオウム返しに暗唱させられたり、何ページも何ページも練習問題をさせられたりすることは、彼らにとって全く納得のいかないことです。ギフテッド児はあらゆる手をつくして戦います。それはまるで、ケーキの中から卵を取り出せと言われるくらい、ナンセンスなことだからです。ギフテッド児はすでにこれらの簡単なスキルは身に着けて、更にハイレベルの知識へとつなげているので、このような反復ドリルによって得るものはなにひとつないのです。
学校から救い出してあげるか、学校に従い不適切な宿題を無理強いする親となって親子関係をも損なうか…。どのような宿題がわが子の学びに本当に役立つのか、どのような宿題が彼らの学習意慾を削ぐのかということを親は知っておく必要があります。
ギフトを与えられた子どもたちには、他の子どもとは異なる宿題や課題、そして彼らを援護してくれる親が必要です。少なくとも、わが子が喜んで学校に通っているか、そう見せているだけなのかを見極めなければいけません。わが子に、より適切な学び、興味のある分野のプロジェクトなどを与えてあげられないか。
もしもその子が心臓移植について知りたがり、将来心臓外科医になりたいと望むなら、(その子にとって)ばかげた学校のドリルや、とっくに習得済みの反復学習の代わりに、その子が本当に学べる場所を見つけてあげることはできないでしょうか。
29:11
私たちは、問題行動を起こす子どもたちを見てきました。そしてその子どもたちがギフテッドであり、非常に賢いと理解され、より興味のある課題を与えられた時に、それまでの問題行動が改善されるケースを見てきました。また食事療法によって改善されることも。薬物療法に頼らなくても、抑圧された感情を行動化する子どもたちへの対処方法はたくさんあるのです。
MC
そのとおりですね。
いつも聞かれることと思いますが、彼らの問題行動の原因は、単にもう既に全てわかっている学校の勉強が時間の無駄だと感じているフラストレーションだとお考えですか?
必ずしもそれだけが原因だと決めつけることはしたくありません。なぜなら多くのギフテッド児は診断可能で治療可能なADHDの特性を併せ持っているからです。
ADHDなのかギフテッドの特性からくるものなのか?重複診断はよくあることで、これらを切り離して診ていく必要があります。私が思うに、その子どもがギフテッドなのにそれが気付かれず、学校が何も支援をしないとアンダーアチーブメントを引き起こし、問題行動に発展する可能性すらあります。
「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(精神疾患の分類と診断の手引)」(【略】DSM・米国精神医学会が発行)にはこう書かれています。
『学校に十分な刺激のない環境におかれている子どもにはギフテッドかどうかの判断ができません。ですから子どもがギフテッドかどうかをみてもらう前に、十分に刺激のある学校環境を与えてあげて、刺激のない学校環境が問題行動の原因となっているかどうかを確認する必要があるのです。』
MC
今日はお時間をいただきありがとうございました。たくさんの質問に答えていただきありがとうございました。みなさんにとって貴重な情報となることでしょう。